鯉の滝登りを表現/entry21

 第21回目は京都の名園の御紹介です。


【 ここが見どころ 京都の名園 】🍀
 著 者/鳥賀陽 百合( うがや ゆり )氏


天龍寺
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嵐山の雄大な借景が広がるという、絶好のロケーション


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夢窓疎石( むそうそせき /1)の庭に共通するのは、景勝地にあるということ。そこに築山を設け、眺望も考慮されて作成されている。

 1.夢窓疎石は、鎌倉時代末から南北町時代・
   室町時代初期にかけての臨済宗の禅僧。
  .七朝帝師。
  .佐々木頼綱の兄経泰の孫。
  .父は佐々木朝綱、母は平政村の娘。

 
龍門瀑ランキング殿堂入り
 《 龍門瀑/りゅうもんばく 》とは滝岩組( たきいわぐみ )に鯉を表す《 鯉魚石/りぎょせき 》が配置されたもので、鯉が滝を登りきると龍に変わるという中国の故事《 登竜門 》を表現したもの。

龍門瀑
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鯉魚石
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天龍寺方丈庭園を作成した夢窓疎石はこのテーマを好んで用い、西芳寺でも枯滝石組で龍門瀑を作っている。方丈庭園に広がる曹源地( そうげんち )の対岸に龍門瀑があるのだが、天龍寺のものは他と比べるとイレギュラーなデザインになっている。通常、鯉を表す鯉魚石は、その名の通り魚のような細長い石が使われ、これから滝を登る様子を表すために滝の下に置かれるが、天龍寺の場合は、滝の中央付近に配置され、しかもずんぐりとした形石が使われている。今まさに滝を登り、鯉が龍に変わる瞬間が表現されているのである。石でダイナミックな場面を表現する、作庭家としての夢窓疎石の芸術的感性はすごい。数ある龍門瀑のなかで私が一番感動する作品である。


コンセプトは石組
 人の手が加わっていない自然石を庭園に使うというのが日本人の美意識であり、石と人と自然の調和によって生まれるのが日本庭園。
 日本の庭にとって石はとても重要な要素で、石の美しさが庭の価値を決めると言っても過言ではない。どのような石を選び、どのように配置するかというところに、作庭家のセンスが問われるのである。
 方丈庭園を鑑賞すると、夢窓疎石が慎重に石を選んでいることがわかる。
 使われるているのは庭園の西を流れる保津川の自然石。力強くて美しい石が選ばれている。それらが滝石組を中心として構成され、広い空間をまとめあげている。石と人と自然を調和させる夢窓疎石のセンスが、ここでも存分に発揮されている。



天龍寺
歴応2年( 1339 )、足利尊氏後醍醐天皇の冥福を祈るため、後嵯峨上皇の亀山殿の地に開創。夢窓疎石を開山に迎えた。夢窓疎石は造営の費用を調達するため、明との貿易を行う天龍寺船を就航させている。至徳3年( 1386 )には京都五山の一位となる。

 ・京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
 ・嵐電《 嵐山 》駅より、徒歩3分
 ・8時30分~17時30分
  ( 10月21日~3月20日は
    8時30分~17時 )
 ・500円( 諸堂拝観は別途300円 )




 発 行/2019年2月9日 初版
 発行所/株式会社 淡交社


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