太古に現れた科学/entry15

 第15回目は天文学の書物です。

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【天文不思議集】🍀
 著 者/ジャン=ピエール・ヴェルデ氏
 訳 者/唐牛 幸子氏


 地球は、その誕生の時には灼熱のマグマのかたまりでした。やがて、それは冷え固まりますが、その後10憶年もの間鉱物と水だけが支配する世界が続き、生命はまだ誕生しておらず、やがて海中に無機物の分子と大差のない、始めての生命が出現しました。当時、地球の表面の殆どを海が覆いつくしていて、そこで生物は適応し発展し、ついには海から隆起した陸にも上陸し、そこで栄えたのです。
 人類が登場する時代の一つ前の時代第三紀の終わりには、地球は地形も動物も植物も、私達がよく知っている風景と似た物になりました。人間の直接の祖先にあたる哺乳類は現在まだ確認されていませんが、勿論第三紀にもそれはいて、そして今から150万年前、その哺乳類の背骨のわん曲がとれるという大事件が起こります。人間が直立歩行しだしたのです。こうして、直立歩行を始めた人間は同時に空を見上げるようになりました。
 何十万年もの間、人間は言葉を発することもありませんでした。知性の表れの一つである技術の分野でも、小さな石器・石の破片で作られたナイフ・削岩用石器等、僅かな痕跡しか残していません。精神的活動についてはまったく証拠は残っておらず、石器時代の後半今から5万年ぐらい前になって、ようやく人間の精神活動を証明するものが現れました。少しばかりの代赭石(たいしゃせき/黄土の中に含まれる赤く柔らかい鉄鉱石)で飾りつけられた骨・火打ち石や骨の破片がはめ込まれた石灰石の小さな塊・彫られた石・彫刻の試みのような痕跡・初期の埋葬跡、それらが人間の精神活動の跡を感動的に物語っています。人間が残した最古の彫刻が刻まれたその石の上には、星座らしきものが描かれています。
 天文学は太古に現れた科学なのです。


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太陽が彫刻された石柱
この立石はアヴィニヨンの近くロッシュ・デ・ドンにあり、5000年以上も前の物です。表面には8本の光を出す太陽が彫られています。


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16世紀に描かれた月の運行図
 月は地球を回り地球は太陽のまわりを回っていて、月の満ち欠けは、この公転による地球と月と太陽の位置関係の変化によって生じます。
 この図でも分かる通り、太陽はいつも月の反面を照らしていますが、地球上からは満月の時以外この明るい半面の全てを見ることは出来ません。地球から見える月の明るい部分の面積は、月と地球の位置の変化によって変わってしまうからです。
 この月の満ち欠けの版画は、アピアヌスと呼ばれたドイツの天文学者ペーター・ベンネヴィッツ(1495年~1552年)が1524年に出版した、天文学の最初の重要な業績『宇宙誌』からの抜粋です。


発 行/1992年12月20日第1版第1刷
    2003年 5月10日第1版第9刷
発行所/株式会社 創元社