第16回目は絵本の御紹介です。
【三びきのやぎのがらがらどん】🍀
絵 /マーシャ・ブラウン氏
訳 /せた ていじ氏
アスビョルンセンとモーの北欧民話
昔、三匹の山羊がいました。名前はどれもがらがらどんで、ある時山の草場で太ろうと思い山へ登って行ったのですが、登る途中の谷川に橋があってそこを渡らなければなりません。橋の下には気味の悪い大きなトロルが住んでいて、ぐりぐり目玉は皿のよう、突き出た鼻は火かき棒のようでした。
さて始めに、一番小さい山羊のがらがらどんが橋を渡ると
かたことかたこと と橋が鳴り
「誰だ!俺の橋をかたことさせるのは」
とトロルが怒鳴ったので、
「なに僕ですよ、一番ちび山羊のがらがらどんです。山へ太りに行く所です」
とその山羊はとても小さい声で言いました。
「ようし、貴様を一呑みにしてやろう」
「ああ どうか食べないで下さい、僕はこんなに小さいんだもの。少し待てば二番目の山羊のがらがらどんがやって来ます。僕よりずっと大きいですよ」
「そんならとっとと行ってしまえ!」
とトロルは言いました。
暫くして、二番目の山羊のがらがらどんが橋を渡りにやって来て
がたごとがたごと と橋が鳴ると
「誰だ!俺の橋をがたごとさせるのは」
とトロルが怒鳴ったので、
「僕は二番目の山羊のがらがらどん。山へ太りに行く所だ」
とその山羊は言いました。前の山羊程小さい声ではありません。
「ようし、貴様を一呑みにしてやるぞ」
「おっと食べないでおくれよ。少しまてば大きい山羊のがらがらどんがやって来る。僕よりずっと大きいよ」
「そうか、そんならとっとと消え失せろ」
とトロルは言いました。
ところがその時、もうやって来たのが大きい山羊のがらがらどん。
がたんごとんがたんごとん がたんごとんがたんごとん と橋が鳴りました。あんまり山羊が重いので、橋が軋んだり唸ったりしたのです。
「一体全体何者だ、俺の橋をがたぴしさせる奴は」
とトロルが怒鳴ったので、
「俺だ!大きい山羊のがらがらどんだ!」
と山羊は言いました。それは酷く嗄れた(しゃがれた)声です。
「ようし、それでは一呑みにしてくれるぞ!」
「さあ来い!こっちにゃ日本の槍がある、これで目玉は田楽刺し。おまけに大きな石も二つある、肉も骨も粉々に踏み砕くぞ!」
こう 大きい山羊は言い、そしてトロルに飛び掛かると角で目玉を串刺しに蹄で肉も骨も木っ端微塵にして、トロルを谷川へ突き落としてしまいました。
それから山へ登って行ったのです。
山羊達はとても太って家へ歩いて帰るのもやっとのこと。
もしも油が抜けてなければ、まだ太っているはずですよ。
そこでーー
チョキン、パチン、ストン。
話はおしまい。🐐🐐🐐
発 行/1965年 7月 1日
/1999年10月20日 第101刷
発行所/福音館書店