第28回目は神社の御紹介です。
一生に一度は行きたい
【 日本の神社100選 】🍀
監修者 /島田 裕巳氏( 宗教学者 )
編集・構成/株式会社クリエイティブ・スイート
岩清水八幡宮
( いわしみずはちまんぐう )
現存する 八幡造( はちまんづくり /1 )としては最古である本殿です。2016年に国宝に指定 されました。
写真/岩清水八幡宮提供
1.八幡造( はちまんづくり )/日本の神社建築様式の一つ。八幡造りとも表記される。2棟の建物を前後に連結させて、一つの社殿としたもの。
日本三大八幡宮に数えられる岩清水八幡宮。京都府の南に位置する男山の山上に建っていて、麓( ふもと )では木津川・宇治川・桂川が合流しています。この地は古くからの交通の要衝( ようしょう )であるとともに、平安京の裏鬼門にあたり、鬼門にあたる比叡山延暦寺( ひえいざんえんりゃくじ )とともに、都の安泰・国家鎮護の神社として古くから信仰を集めてきました。現在でも、宮中の正月祭祀の一つで、天皇が豊穣と天下泰平を祈る《 四方拝( しほうはい /2 )》で拝まれています。
2.四方拝( しほうはい )/毎年1月1日( 元旦 )の早朝、宮中で天皇が天地四方の 神祇( じんぎ /3 )を拝する儀式。
3.神祇( じんぎ )/神は天津神である《 天神 》を、祇は国津神である《 地祇( ちぎ )》を表しその名の通り祭祀を司る。
創建は平安時代。859年、奈良/大安寺の僧 行教( ぎょうきょう )が、豊前国( 大分県 )の宇佐八幡宮に籠って 祈祷( きとう /4 )をしていた時、
「 吾れ( われ )都近き岩清水男山の峯に移座( いざ )して国家を鎮護せん 」
との大神の託宣を受けたのが始まりで、行教の 奏請( そうせい /5 )を受けた清和天皇が六宇の宝殿を建立、そこに宇佐八幡宮の神々をまつりました。
4.祈祷( きとう )/神秘的な力をもつ特定の対象に対し、期待する結果を得るために祈ること。
5.奏請( そうせい )/天子に奏上して 裁可( さいか /6 )を求めること。
6.裁可( さいか )/判断して許可すること。特に、君主が臣下の提出する議案を裁決し、許可すること。
創建に僧侶が関係したことからもわかるように、 当初から 神仏習合( しんぶつしゅうごう /7 )の色彩が強く、山麓には《 男山四十八坊 》と呼ばれた宿坊もありました。しかし、これらは明治の 神仏分離令( しんぶつぶんりれい /8 )によって廃止され、境内の仏像・仏具など仏教的なものはすべて排除されて現在に至ります。
7.神仏習合( しんぶつしゅうごう )/日本土着の神祇信仰( 神道 )と仏教信仰( 日本の仏教 )が融合し、一つの信仰体系として再構成( 習合 )された宗教現象。
8.神仏分離令( しんぶつぶんりれい )/神仏習合をやめ、神道と仏教との区別を明確にしようとする、明治初期における維新政府の宗教対策。
創建以来朝廷から崇敬された岩清水八幡宮ですが、939年の平将門の乱を神威(しんい /9 )で平定させたとの言い伝えから、武将からも厚い信仰を集めていました。氏神として信仰していた源氏をはじめとして、足利・織田・豊臣・徳川といった名だたる戦国武将に戦勝の神として信仰されていて、織田信長から寄進された本殿・相の間にかかる通称《 黄金の雨樋( あまどい /10 )》が今に残ります。現在の社殿は1634年に徳川家光が造営したものです。楼門・舞殿・幣殿・本殿を寺院のように約180メートルの回廊が取り囲んでいて、いずれも桃山調の絢爛豪華( けんらんごうか )な透かし彫りが施されています。
現在でも必勝祈願・厄よけのご利益を求めて参拝する人が多いようです。とくに本殿脇に立つ 楠木正成が必勝祈願のために奉納したと伝えられる御神木 や、三の鳥居の近くに露出している《 一ツ石 /11 》は勝運向上のパワースポットとして知られています。
9.神威( しんい )/神の威光・威力。神威( カムイ/アイヌ語 )で神格を持つ高位の霊的存在。
10.雨樋( あまどい )/屋根から流れ落ちる雨水を受け止め、地上へと流し込む用品。
11.一ツ石( ひとついし )/三の鳥居から本殿へと続く、馬場先と呼ばれる石敷の参道の三の鳥居付近中央に、その箇所のみ自然石が露出している部分があります。この石は通称 一ツ石・勝負石・お百度石 などと呼ばれ、一ツ石・勝負石は 五ツ石( かつて、南総門下にあった )に対する呼称で、この石が走馬・競馬の出発点になっていたこと( 終点が五ツ石 )に由来するといわれています。お百度石は、この石が 百度参り・千度参りの起点になっていたこと( 蒙古襲来の折には、人々が一ツ石と本殿を往復し、道俗千度参りを奉修した )に由来するといわれています。
楠木正成が奉納したと伝えられる 樹齢約700年の楠 。根周り約18メートル、樹高約30メートルで、京都府の天然記念物に指定 されています。
写真/岩清水八幡宮提供
織田信長が寄進したという《 黄金の雨樋 》です。
写真/岩清水八幡宮提供
⛩️ この神社ならでは
動き出した彫刻の猿の右目にクギ!?
西門の 蟇股( かえるまた /12 )に《 目貫き( めぬき )の猿 》と呼ばれる猿の透かし彫りがあります。左甚五郎作とされるこの猿は、彫刻があまりにもすばらしいために命が宿ってしまい、夜な夜な社殿を抜け出していたずらをしていました。それを封じ込めるために右目に釘が打ち付けられたといわれています。
写真/岩清水八幡宮提供
12.蟇股( かえるまた )/社寺建築において、梁や頭貫( かしらぬき )上にあって上の荷重を支える材。蛙股とも表記する。
岩清水八幡宮
アクセス/京阪本線《 八幡市 》駅下車、男山ケーブル《 男山山上 》駅から徒歩5分
創 建 /859年
発 行/2018年8月12日
発行所/株式会社 宝島社