第40回目はデータファイル( 動物 )の御紹介です。
【 すばらしき野生の王国 】
アカギツネ( 陸生哺乳類 )
持ち前の適応力でたくましく生きる
毛並みが美しくて、尾がふさふさしていて、動きがすばしこい ーーー。アカギツネには、ゴミあさりだの、農家の庭泥棒などといった、かんばしくない評判はありますが、それ以上に多くの人を引きつける魅力があります。事実、アカギツネは、世界中の広い範囲に分布し、環境にうまく適応しています。だからこそ、だれもが知っているおとぎ話や漫画に、ずる賢く立ち回る役でたびたび登場します。都市化の恩恵を受けてきた動物は数えるほどですが、アカギツネはそのひとつです。
🌍 アカギツネの生活
適応能力も知能も高いアカギツネは、新しい環境にもいつもよくなじみ、うまくそれを利用します。足がとても早く短時間なら時速60kmものスピードを出せるし、2mもの高さの障害物をよじ登ったり飛び越えたりすることもできます。
活動するのはほとんど夕方か夜で、昼間はふつう、なわばり内にいくつもある巣穴のいずれかか、一休みできる場所で眠っています。なわばりの広さ1~10.25k㎡ほどで、アカギツネはその境界線に糞や尿、肛門その他の線から出るにおいで印をつけていきます。吠え声は鋭く、かん高いです。
うまく環境を生かす名人、アカギツネにかかると、庭の温室の棚も居眠りの場所に変わります。
🌍 みんなで子育て
アカギツネのメスは何頭かのオスと交尾したのち、1頭を生涯の相手として受け入れます。つがいになった2頭は巣穴をたくさんつくりますが、巣穴は自分たちで掘ることもあれば、ほかのキツネの巣穴を横取りすることもあります。
そして、なかでもいちばん大きな巣穴を選んで、そこで子供を産みます。生まれたばかりの子供は目も見えず自分では何もできませんが、生後10~14日で目が開き、初めは青かった目は生後5週間までには琥珀色に変わります。子供の世話には両親がともに関わり、前の年に生まれた若いメスが手伝うこともあります。子供は12週目までには完全に乳ばなれしますが、秋になるまでは母親といっしょに過ごします。
アカギツネの子供は、生後4週間すると、おずおずと巣穴の外に出始めます。
🌍 好き嫌いなしに食べる
アカギツネは食べ物をあまり選びません。つかまえて食べるのは主に小型の哺乳類、特にウサギですが、昆虫やミミズ・鳥・卵・果実などもすすんで食べます。都市部ではゴミ箱をあさったり、鳥のために置いてあるパンくずを食べたりもします。
アカギツネには、家禽( かきん )殺しの悪名もあります。鶏小屋のニワトリが一度に何羽も殺されることがありますが、これはアカギツネが血に飢えているからではありません。余分な獲物を有効利用しようとする自然な行為です。余分な獲物は、可能ならば、埋めてたくわえておくのです。狩りは単独でおこない、まるでネコのように獲物の後をつけます。ネズミなど小型の獲物を殺すには、空中高く飛び上がってから襲いかかり、前足で獲物が動かないよう押さえつけます。
食べ物を求めてゴミ箱をあさるアカギツネ。
アカギツネ( Red Fox )
分 類 /食肉目
科 名 /イヌ科
属 名 /キツネ属
学 名 /Vulpes unlpes
生息域 /林地を含む温暖な森
/山岳地帯・高地・がれ場の斜面
/砂漠や半砂漠
/ツンドラを含む極地
/市街地や農地
行動単位 /つがい
体 長 /58~90cm
尾 長 /32~49cm
肩 高 /35~40cm
体 重 /3~11kg
性成塾年数 /10か月
繁殖時期 /晩冬または早春
妊娠期間 /49~55日
一回の出産数 /最大12頭( 平均4頭~8頭 )
繁殖期間 /1年
主な食べ物 /小型の哺乳類・昆虫・ミミズ・果実・残飯
寿 命 /最長10年
ピンとたった耳
・獲物が動くかすかな音も聞き取る。
琥珀色の目
・タテに細長い瞳孔がある。
・目が顔の全部についているため、見ている物までの距離がつかみやすい。
・反射板を備えた網膜のおかげで、夜でもとてもよく目が見える。
ほっそりしたアゴ
・主に小型の哺乳類を食べることがうかがえる。
びっしり生えた毛
・色は普通赤褐色で、腹部は少し色が薄い。
いろいろな色の毛皮
・アカギツネという名前がついていても、みながみな毛の色が赤いというわけではない。“ 十字ギツネ ” は、背筋と肩に黒い筋が通っていて十字模様になっている。ほかにも全体が銀色や、ほとんど真っ黒というものもいる。
ふさふさした長い尾
・毛先が白い場合もある。根元の黒っぽい部分には臭いを出す大きな香腺があり、尾はこの臭いをまき散らすのにもつかう。
長い後ろ脚
・この脚のおかげでとても高くジャンプすることができる。
少しだけ引っ込められる爪
・地面に触れにくくすることで爪の先の鋭さが保てる。
アカギツネの仲間たち
アカギツネには、同じキツネ属で非常に近い種がいくつかありますが、どれもアカギツネほど数も多くなく、住む地域も広くありません。そのうち、いちばん小さいのが、アフリカやアジアの砂漠地域に住むフェネック( fenec )で、その他ベンガルギツネ( Indian fox )も近い種のひとつです。ホッキョクギツネ( Arctic fox )は、もう少し遠い関係になります。キツネ属は、イヌやオオカミなどのイヌ科に属しています。
ベンガルギツネ
神話? それとも実話?
キツネのなかには、獲物をつかまえるのに策略をめぐらすものがあるといわれています。そのひとつにチャーミングというのがあります。おどけたような、よく目立つ行動をとり、獲物となる動物が何ごとかと近寄って来るようにし向け、獲物がうんと近づいたら、飛びかかってつかまえるのです。死んだふりをして、死肉をあさる鳥がエサだと思ってやって来るのを待つという話もあります。