第 66 回目は絵本の御紹介です🍀
【 クリスマスのねこ ヘンリー 】
文 /メリー・カルホーン氏
絵 /エリック・イングラハム氏
訳 /猪熊 葉子氏
ヘンリーと家族が 教会の前で 車を下りた ちょうどその時、雪が 降りだしました。
「 クリスマスの劇に ぴったりだなあ! 雪が降ると・・・・ 」
男の子は 言いました。
羊飼いの役を やることになっていたのです。
「 ほら、見てごらんよ、馬屋の上に 星も でたぞ! 」
ヘンリーは 雪が 嫌いだったので、
さっさと 馬屋の中に 走り込みました。
雪で 濡れた 手足を舐めていると、
乾いた藁( わら )が いっぱい詰まった 箱があるのに 気付きました。
丸くなって 休むのに ぴったりじゃありませんか。
ヘンリーは ぽん、と その箱に 飛び乗りました。
大きな 人形を抱えた 女の子が 通りかかりました。
「 あら、青い目の 猫だわ! 」女の子は 人形を 藁の上に置くと、ヘンリーを 抱き上げました。
女の子に 撫でられながら ヘンリーは、喉を ごろごろ 鳴らしました。
「 あなたは お母さんの マリア様役をやるんだから、赤ちゃんの イエス様を 抱っこしなくちゃ。
猫じゃ駄目よ、イエス様の生まれた 馬屋には 猫達は いなかったんですもの 」
なんだって、猫じゃ 駄目 だって? どうしてなんだ!
ヘンリーは 耳を平ったくして 怒りました。
その時、男の子が 呼びました。
「 ヘンリー、おいで、僕の 子羊を見てごらんよ! 」
お父さんの友達が、劇の為に 可愛がっている 子羊を 貸してくれたのです。
「 こいつはね、ボニーって言うんだよ 」お父さんの友達は 言いました。
「 おや、君の猫は このサフォーク種の羊と おんなじ色をしているんだね 」
ボニーは ヘンリーに 鼻を近づけました。
そして、御互いに くんくん 匂いを嗅ぎあいました。
“ ミャーオウ ” ヘンリーは、大きな声で 鳴きました。
ボニーが 気に入ったのです。
“ メーエ ” ボニーも 返事をしました。
ヘンリーが 好きになったのです。
お父さんの友達は、羊は 飼い主の声で 動くのだ、と 説明してくれました。
なるほど、お父さんの友達が「 おいで 」と 言うと、ボニーは その通りにしました。
お父さんの友達は 言いました。
「 こいつが 君の 言うことを聞くかどうか、試してごらん 」
「 よし、わかった。さあ、ついておいで、ボニー 」
男の子は、歩きながら 言いました。
でも、ボニーは、ちっとも動きません。
男の子は、がっがりした様子です。
“ ニャーオ ” ヘンリーは、男の子の 足に 頭を擦( こす )りつけました。
“ メーエ ” ボニーも、ヘンリーの 真似をして 鳴きました。
お父さんの友達は、笑いました。
「 羊の 番をする 犬の代わりに、君は 羊飼いの猫を 持っているんだね 」
劇の 衣装を着けた 子供達が やって来て ボニーを撫でました。
お父さんは 車の中に入れようとして、ヘンリーに 手を伸ばしました。
それを見て、男の子は言いました。
「 出しておいてよ。ボニーは、ヘンリーの言うことなら、聞いてくれるかもしれないんだから 」
ヘンリーの耳が ぴんと 立ちました。
そして、尻尾を振りながら、ボニーの足に 体を擦りつけました。
少し後で 他の男の子が ロバを連れて やって来ました。
「 ちょうど良かったわ 」クリスマスの歌の リーダーが 言いました。
「 ヨゼフと マリアが乗る ロバも そろったわね。
さあ、劇の 練習になるから、近くを一回りして、クリスマスの歌を 歌ってきましょうよ 」
子供達は、リーダーに ついて歩きながら、 「 おお、小さなベツレヘムの町よ 」を 歌いました。
ヘンリーも 歌いました。“ ミャーオウ、ミャオウ、ミュー ”
“ メェー、メーエー ” ボニーも 鳴きました。
一軒の 家の前で、皆は 立ち止まりました。
お婆さんが 玄関先に でで来ました。
マリア様役の 女の子が「 赤ちゃん 寝かせる 揺りかごも無い 」と 歌うと、
皆は「 まぐさ桶に 寝かされた 」と 続けました。
ヘンリーも 釣られて “ ミャーオ ” と 鳴きました。
男の子は 慌てて ヘンリーの口に 手を宛( あて )がいました。
お婆さんは、それを見て 笑いました。
もう 一軒は、男の子のクラスの 友達の家でした。
その 女の子は 病気で 劇に 出られなかったのです。
子供達が 歌い始めた時、“ ウー、ワン、ワン! ” と 女の子の犬が、玄関の ドアに向かって走って来て、皆に 吠えかかりました。
“ ベーエ、ベーエ ” 驚いた ロバが 鳴きました。
“ メーエ、メーエ ” 恐くなった ボニーは、男の子から ぱっと 離れると、一目散に 逃げて行ってしまいました。
直ぐに、男の子は 追いかけようとしましたが、リーダーに、止められました。
「 行っちゃ駄目、暗いから。あなたを 一人で行かせるわけには いかないわ。
教会へ 戻ったら、飼い主に ボニーを 探してもらいますからね 」
「 ああ、どうしよう! 」男の子は 心配そうに言いました。
ボニーは、家と家の 間を通り抜け、姿を消してしまったのです。
迷子になるぞ、ヘンリーは 考えました。それに 怪我をするかもしれない。
ヘンリーは、後を追って、飛ぶように 道を渡って行きました。
ヘンリーは、雪の上に、、、、、、、、、
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羊と仲良くなりそうなのは犬のような気がするのですが、猫というのが面白いですね。人間と一緒に歌うヘンリーとボニーの姿は微笑ましいです。
皆様、今年のクリスマスは幸運の猫ヘンリーと過ごしませんか?
Sakuya ☯️
※ ベツレヘムは、ヨルダン川西岸地区南部にあるパレスチナ・ベツレヘム県の県都で、新約聖書ではイエス・キリストの生誕地とされています。
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※ 漢字表記を多く使用して御紹介しています。
文 /メリー・カルホーン氏
( Mary Calhoum )
1957年に最初の絵を出版して以来、「 ねこのヘンリーシリーズ 」をはじめとして、50冊をこえる作品を発表。
絵 /エリック・イングラハム氏
( Erick Ingraham )
手がける絵本どれもが高い評価を得る。『 スキーをはいたねこのヘンリー 』ではボストングローブ・ホーンブック賞受賞。
訳 /猪熊 葉子( いのくま ようこ )氏
児童文学者・翻訳家。聖心女子大学名誉教授。『 児童文学最終講義 』『 真夜中のパーティー 』『 妖精物語について 』『 辺境のオオカミ 』など、著書・訳書、評論多数。
クリスマスのねこ ヘンリー
発 行/2006年12月15日 初版第1刷
発行所/リブリオ出版
Text copyright ©️ 2003 by Mary Calhoun
Illustration Copyright ©️ 2003 by Erick Ingraham